
ここは、関之尾滝近くにある築50年の古民家。
凛とした竹林の間に静かに佇むこの場所に、久しぶりに人々の温かい笑い声が響き渡りました。
2026年1月31日、いよいよ「リノベーションスクール」の第1回目がスタートしました。
ここは、単なる空き家の改修を行うだけの場所ではありません。
眠っている空き家を地域の貴重な資源としてとらえ、自分らしいライフスタイルを実現しながら、地域との関係性をしっかりと築いていく。そんな新しい生き方や働き方を形にするための、記念すべき挑戦の場所です。
多方面から集まってきた参加者たち

今回集まったメンバーは十数名。他県から新たにこの地へ移住してきた人、宮崎で生まれ育ち一度は東京に出て再び故郷へ戻ってきた人、海外での長い生活を終えて宮崎で次の人生をスタートさせた人など、実に多様な顔ぶれが揃いました。
年齢も、普段の職業も、これまでのバックグラウンドもバラバラです。最初は「初めまして」と少しぎこちない自己紹介が飛び交っていましたが、「移住」「空き家」「リノベーション」「宮崎」という共通言語を持つ者同士、打ち解けるのにそれほど時間はかかりませんでした。
誰もが胸に抱いていたのは、「ここから何かが始まる」という確かな高揚感。それぞれのバックグラウンドを持った人たちが一つの場所に集まり、これからの新しい挑戦に向けてワクワクする空気を共有していました。
手で壊し、創る。リアルなDIYの実践

ドカン!ドカン!
軽快なハンマーの音が、静かな古民家に響き渡りました。まずは、歴史を重ねた不要な土壁の撤去からスタートです。
このリノベーションスクールは、決してプロの職人たちが集まる場ではありません。DIYの経験がない人はもちろん、普段は工具を一度も握ったことがないようなメンバーもたくさん集まっています。
普段の生活で大きなハンマーを振り下ろす機会なんてまずありません。「日頃の運動不足の解消にちょうどいいぞ」とばかりに、みなさんどこか笑顔で壁を叩きつけています。……もしかすると、日頃のちょっとした鬱憤(うっぷん)も一緒に晴らしていたのかもしれませんね(笑)。
丸ノコやインパクトドライバーといった本格的な道具を前に、安全面に最大限配慮しながらも、少しドキドキとした面持ちでグリップを握る参加者たち。

「思ったより本体が重かったですが、こんなにサクッと切れるんですね!」
「ちょっと見てください、私が打ったビスのところ曲がってないですか?」
大の大人が真剣に、しかしどこか誇らしげに声を掛け合っています。現場はまるで、小学校の図工室のような圧倒的な盛り上がりを見せていました。きゃっきゃと無邪気にはしゃぐその瞳には、誰もがいつまでも忘れない少年少女のような遊び心が宿っていました。
一方で、黙々と手を動かしながら、鋭く真剣な顔つきを見せる参加者の姿もあります。

「もしこれを自分のウチでやるとしたら、どういう風にアレンジしようかな」
「この資材はまだ使えるから、自宅の改修でも購入を検討してみようか」
きっと頭の中では、今回の経験を自宅に持ち帰ったときの展開をシミュレーションしているに違いありません。
「この場合って、どういう手順でやればいいんですか?」といった具体的な質問もあちこちから飛び交っていました。
リノベーションスクールを支えるスペシャリスト

今回のスクールを心強いバックアップで支えてくれたのが、プロの目線から的確なアドバイスと先導をしてくれる頼もしい存在です。
それが、株式会社TAKAHASHIから応援に駆けつけてくれた湯ノ上さんです。
現場に響くのは、プロの視点から投げかけられる的確なアドバイスと、その場の空気をパッと一段引き上げるようなポジティブな声掛けの数々。プロの確かな技と、参加者たちのむき出しの熱意が絶妙に混ざり合う現場は、他では味わえない心地よいライブ感に包まれていました。
個人でリノベーションやDIYを進めるとき、誰もが直面して一番ネックになるのが「段取り」の難しさです。「次に何をすればいいんだっけ?」「何の部材から手をつければ正解なんだっけ?」と、途中で手が止まり、迷子になってしまう状態に陥りがちです。
しかし、こうしてプロのリアルな仕事の進め方を間近で目にし、直接アドバイスをもらうことで、参加者たちのリノベーションに対する解像度やスキルは確実に一段階、いや二段階も引き上げられているはずです。
青空の下の特製カレーは格別な味!

「それでは、そろそろお昼休憩にしましょうか!」
そんな声とともに待ちに待ったランチタイム。この日のお昼ごはんは、今回の開催に向けて特別に用意された炊き出しの特製カレーです。
澄み切った青空の下、歴史を重ねた古民家の軒先でみんなと一緒にフーフー言いながら食べる温かいカレーの味は、言葉にできないほど格別でした。作業着姿のまま、イスに座るのも忘れて立ち話に花を咲かせ、みんなで声を上げて笑い合う。午前中の作業で感じていた少しの緊張や堅さもどこへやら、立場や年齢の垣根を軽々と超えたフラットな対話が、そこかしこから自然と生まれていきました。
こうして同じ釜の飯を囲み、共に汗を流したあとに笑い合う飾らない時間の積み重ねこそが、このスクールが最も大切にしている「地域とつながる仕組み」の本質なんだと、改めて心から確信しました。
思い通りに行かない苦悩、迫るタイムリミット

実は、すべてが最初から最後まで順風満帆だったわけではありません。
一筋縄ではいかないのが、古民家リノベーションの現実です。実際に作業を進めてみると、思っていたよりも地面が大きく傾いており、その軌道修正に予想以上の時間を取られてしまう場面もありました。
「ここは完璧を目指して修正しますか?それとも、ある程度妥協し、スピードを優先して進めるべきか?」
綺麗事だけでは進まないリアルな意思決定が、古民家のオーナーに委ねられる場面が何度もありました。
できることなら、どこまでもこだわり抜いてできるだけいいものを作り上げたい。でも、最初から100%の完璧を求めてばかりいたら、いつまで経っても前に進むことはできません。そんな現実のジレンマや葛藤を胸に抱えつつ、スクールは終盤へと突入していきます。
「ちょっとだいぶ時間が押してしまっているので、一旦ここで仮締めにして、この後の予定がある方は無理せずこの辺りで解散にしましょうか!」
そう言って、名残惜しそうにしながらも参加者たちの帰宅を促す一幕も。いかにプロの確かな段取りやサポートがあったとしても、実際に目の前の古い建物と対峙しながら進めていく現場では、次から次へと予期せぬ問題が立ちはだかり、決して思い通りには進みません。
だからこそ、計画通りにいかない壁にぶつかったときの向き合い方や、現場で臨機応変に対応するリアルな知恵など、教科書通りではない生きた学びを深く得ることができた一日でした。
リノベーションスクールを終えて、何を思う

「住む」という選択は、ときに孤独を感じてしまいがちです。しかし、こうして仲間と共に同じ場所に立ち、額に汗を流し、青空の下で同じ特製カレーを囲むことで、これから描く未来はもっと鮮明に、そして温かく見えてくるはずです。
その合間の何気ない雑談や、ふと交わされた会話の中から、次の新しいリノベーションのアイデアが決まるかもしれない。
眠っていた古民家の具体的な利活用が動き出すかもしれない。
そして、この小さな拠点から、地域全体に心地よい新しい風を起こすかもしれない。
かつては長い間時間が止まっていた古民家が、今回のリノベーションと人々の熱気によって、確実に小さな、けれど確かな風を起こし始めました。
次はどんな景色を、そしてどんな仲間たちと、どんな場所で共に描けるでしょうか。


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